知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

中国、韓国、台湾の意匠制度紹介セミナー

弁理士会の意匠委員会と研修所の共催で、表題のセミナーが(当地でも!)あったので受講。とはいえ、あまり受講者は多くなかったな。年末で忙しい先生が多いのか、外国意匠の案件はあまり多くないのかは不明。

私は事務所時代は意匠案件はほとんどなかったし、前の会社では担当したこともなかったので、あまり系統立てて外国意匠について研修を受けたことはなく、断片知識にとどまっている。しかしながらこの時代、これらの国への出願や権利行使は避けて通れないところなので、まとまって知識を得る機会は貴重。ということで渡りに船だった。3時間で3カ国の意匠制度の紹介を4人の講師で行うというボリュームの多い研修だった。ちょっと詰め込みすぎの嫌いもあるが、1回の研修でこれだけの内容を一通り押さえておけるというのはよかった。

当社で、いま、現実に必要になるのは中国の意匠が中心になるので、それについて簡単に内容と感想を。

ご存知の向きも多いと思うが、中国では専利(特許・実用新案・意匠)の出願・登録がグイグイ増加していて、2008年の出願が828,328件。うち意匠出願は312,904件(登録は141,601件)。2009年は経済状況悪化で減少が予想されたが思ったほど減っておらず、10月末の時点で63万件−21万件とのこと。

意匠出願のうち95%が国内、5%が海外から。しかし、登録率は外国からの出願の方が高いとのこと。ふ〜ん、と聞いていたが、よく考えたら中国の意匠って実体審査はしないんだよね?初歩審査だけなのになんでそんなに拒絶されるんだ??と思ったりする。

さて、これも御存知の通り、中国専利法は2009年に第三次改正があり、意匠関係もかなり大幅な改正がなされている。改正法の適用は、2009/10/1以降の出願で、原則として遡及効はない。改正関係を含めて、中国意匠制度の特徴としては、

■部分意匠制度がない 
■秘密意匠制度がない
■新規性喪失の例外の適用範囲が狭い(特実と同じレベル)
■実体審査がなく、初歩審査を行う
■意匠の簡単な説明が必須(2009改正)
 必須書類であり、かつ、権利の解釈に用いることができる
 ※日本では任意記載であり、権利の解釈に参酌してはならない。
■類似意匠を10まで同一出願に含めることができる(2009改正)
■意匠評価報告書制度の新設(2009改正)
■特実との変更出願制度がない
■存続期間の起算日は登録日でなく出願日から10年

2009改正の主な点としては、上記と重なる部分もあるが、

■実施の定義に「販売の申し出」が追加された(11条)
 ※「使用」は相変わらず入っていない。
■登録要件(23条)が見直され、
 ・外国における公開使用された意匠も無効理由となった
 ・拡大先願が認められた
 ・創作非容易性に近似する概念が導入された
 ・他者の合法的権利(意匠に限らない。物品非類似でも。証憑や著作権等でも)と抵触してはならないとなった
■平面デザインの登録制限が追加された(25条)
■意匠の簡単な説明の義務化(27条)

おもしろいのは、25条の不当録事由に追加された「平面デザインの登録制限」で、包装紙やラベル等の平面デザインに商標等が付され、標識として機能する状態で登録されているものが多い現状が背景にあるとのこと。中国では商標は実体審査があるが意匠は無審査なので、商標の代わりに平面デザインの意匠として登録しているらしい。なんと意匠登録全体の20%程度がこのような平面デザインであるとのことだ。

先日中国意匠の検索をしていた隣のグループが、パッケージの平面デザインの登録がやたら多くて「意味が分からん」と首をひねっていたのだが、理由がわかったよ。他人が既登録していて商標が取れない状況もあったりするし、便宜的に使われてきたのだろう。

ともあれ、改正法は始まったばかりでまだ実施細則も出ていない状況。しばらくは様子見のようである。