知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

若手のギモン(15):マイクロフィルム

どうせそのまま通らないだろう&通れば儲けもの、くらいのつもりで大風呂敷を広げて今期比50%増の予算を作って提出したら、案の定というかさらに震災の影響で売上大幅減少が見込まれるので経費予算は厳しく見直しがかかってひーこら言っている年度末である。

さて、ぼちぼちのペースで中間処理のOJT中の若手2号君である。拒絶理由の検討をしていたところ、引用文献一覧に、

1.特開xxxx-xxxxxxx公報
2.特開平xx-xxxxxxx公報
3.実願昭xx-xxxxxxxのマイクロフィルム

となっている。

す、すみません。この『マイクロフィルム』って、一体なんでしょうか。

(まだ昭和の時代の引例が来るのねぇ。本願の側の問題ではあるが、まあ分野とかものによってはまだまだありますね。)

思わず、『今は昔』で説明を始めてしまった(笑)。2号君は、平成生まれでこそないけれど、昭和を生きていたのは5年ほどで、きっとこの引用文献3は彼が生まれる前のものだろうなぁ。

さて、今は昔、実用新案が無審査になる前のころ、特許と同じように出願されて1年半で公開になっておりました。が、実用新案の公開は、いわゆる要部公開で、特許のように出願明細書全文が公開される方式ではなかったのです。具体的には、公開実用新案公報に掲載されたのは、書誌事項、実用新案登録請求の範囲、要約、図面だけで、考案の詳細な説明は公開されていませんでした。実用新案は、物品の構造等にかかるもののため、図面があれば公開情報としては十分だろうということで要部公開になったと言われています。

が、審査において引用されるのは、たいていの場合図面や請求の範囲ではなくて、考案の詳細な説明の記載の中に書いてある事項なんですね。この場合、引用文献として公開実用新案公報というわけにいきません。ではどうなるかというと、出願時に提出された明細書全文は、特許庁でマイクロフィルムの形で保存されていますので、引用文献は『実用新案登録出願のマイクロフィルム』となるわけですね。

その昔、特許電子図書館ができる前は、このマイクロフィルムの内容を知ろうと思ったら閲覧をするしかなかったわけですが(業者に頼んで取り寄せをしていました)、今では、IPDLで、“実用全文”(U1)の形式で、 昭46-000001〜平04-138600(平成4年12月25日公開)が入手できます。

ま、『マイクロフィルム』が出てきたら、実用全文のことだと思っていいよ。

と片付けてしまったが(そして実務上それ以上でも以下でもないが)、よくよく後から考えたら、彼は新聞の縮刷版とかがマイクロフィルムに保存されていて、それをリーダーで読んだりした経験も、そういうものが存在すること自体もなじみがないんじゃないだろうか、と思い至った。

それにしても、実用新案の審査時代を直接知っている人の割合が知財業界でもどんどん減っているなぁ、と改めて思う。私自身、合格時の弁理士試験がちょうど平成5年改正法施行直後の平成6年なわけで、そりゃ無理もないんだけど、話が通じなくて時々あれ?と思うことがある。