知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

教育とか育成とか

知財協の某専門委員会で推薦されたので読んだ本。

ケースメソッド教授法入門―理論・技法・演習・ココロ

ケースメソッド教授法入門―理論・技法・演習・ココロ

本旨についてはここに書けるほど読み込んでいないのだが(とはいえ、教育や育成について考える際のヒントに満ちている。DVDも付属しているので、おすすめの一冊であることには違いない)、いくつか前提のように書かれていた文章が目についたのでメモ。

ケースメソッドによる教育効果について(第1章5)
◆教育効果探求の歩み

概念を構築・形成し、それを適切に説明・表現する能力は、年齢を重ねるとともに必ず身につく力とは言い難いように思われる。そのような能力は、入社時に既に片鱗があり、職務を通して磨かれた人のみが開花させている。その意味では、概念構成力の素地がない人でもケースメソッドで学べば、それが十分に育まれるというのは言い過ぎであろう。しかし、能力的素地のある人がケースメソッドで学んだときの伸び幅は、職務経験だけで伸ばす場合と比べて、非常に大きくなるはずだ。なぜなら、ケースメソッド授業での発言は、短時間で形成した概念を発話することの連続だからである。

気になったのは、上記の強調部。概念構成力って、素地がないと身につかないのか〜(やっぱり)。こう言われてしまうときついな。経験的にそうかとは思っていたのだけれど。そうなると、素地がない人にどこまで教育するかという難しい問題になってしまう。どんな職種でもマネジメントには概念構成力が求められるが、知財系の場合、業務内容自体が概念構成力を必要とするので、「向かない人は向かない」という結果になってしまう気がする。

来る日も来る日も考え続けるためには、相当な意志の強さが必要だ。明日の授業に出るための予習から逃げ出さずに、毎日深夜まで勉強し、規則正しく登校し、果敢に発言することを繰り返す家庭で、ビジネスリーダーに必要な"tough mindedness"が自ずと養われる。

最近身にしみて感じていることである。余裕がないときにいかに考え続けるか。そのような環境をどうやって自ら整備するのか。

経営(それに限らず、広く実務)では、事前の備えが十分でないのに対処しなければならない、前に進まなければならない場面がいくらでもある。そうすると、事前には備えきれないがゆえに、「その場で何とかする力」が重要になる。この種の力は人から短時間に授かる類のものではないため、自分で作り上げていくしかない。また、このような力は属人的で、その人のものの見方や価値観とも密接に関係している。

結局人となり、価値観に行き着くのだな、と、改めて思う。

◆実践性と効果

学習する構え実務から本当に学ぶかどうかは本人次第である。自分が直面した問題について、「訓練機会としてどのような価値があったか」「そこから何を学ぶべきであったか」と時間を割いて振り返ることのできる人間は、周囲が期待するほど多くない。(中略)実務の現場では問題の解決がまず優先で、問題が克服されたら家路を急ぎ、自宅で家族とくつろぎたいのがビジネスパーソンである。実務者が実務から必ず「学んでいる」とは言い難い。

まったくその通りで、だからこそ、管理者としては、部下がこのような機会を捉えて学ぶように常に仕向けること、欠かさず報告させ、常にそういう姿勢を持つように意識づけることが大切。改めて認識した。