知財渉外にて

2008年3月~2014年9月までの間、知財渉外ネタを中心に書いてきました。

企業グループの知財(特許)管理

先日来、グループ内の知財管理のスキーム作りにいそしんでいる。
※『知財』といっても実質考えているのは特許のことだけだったりするが。

事業領域が広がったり、機能を分社化したり、海外に現地法人を設立したりしていけば、複数の会社からなる企業グループができあがる。親会社があり、50%超の株式を親会社が有する子会社があり、20%〜50%の関連会社があり、関連会社でなくても影響下にある会社もあったりする。

製造業を事業の中心としている場合に事業領域の広がりに伴って子会社を作っていくと、その子会社でも開発・製造行為が行われ、成果物として知的財産が発生する。原則カネを出したものが成果を取るということで、開発行為を行った事業子会社に帰属させておくのが最も原始的な管理になる。なにも考えなければこうなるというか。

一方、特許権は、医薬・化学分野以外の特に電機分野では、群で所有しなければほとんど意味がなく、集積するところに価値がある。質が大事だと言ったところで、1件2件の特許でモノをいうことができるのは極めて稀。まずは当該分野でどれだけ特許群を抱えているかの勝負である。となれば、異なる事業領域の子会社といってもたいていは本体の延長上にあるわけで、全く関連のない分野であるはずもないから、親会社と子会社の特許はまとめて群で管理したい。

ではそのまとめて管理のやり方は?といえば、こんなところか?

(1)親会社が子会社の開発費も全額負担して、その対価として成果物たる知的財産はすべて吸い上げる
(2)発明者への報奨金や特許等の権利化にかかる費用を親会社が負担して、その対価として権利化された知財は親会社に移転する、または共有とする

権利移転のスキームを組むときに留意しなければならないのは、権利者の事業と損害の発生との因果関係。本該の事業とまるで関係のない子会社発の特許を権利行使する場合、本体には損害が発生しないとされないか。損害賠償額に関して実施料相当額しか認められないのではないか。差止請求権は認められるのか。

あとは、海外の現地法人で開発行為が起こるようになると、同様に親会社(日本)にまとめて持ってきたいが、国によっては第一国出願を当該国ですることが義務付けられていたりするので要注意(米国・中国など)。

移転の対価が適切かということも、対税務当局(日本・現地)という観点では重要になる。

これが親会社がふつうに製造メーカーであればそれほど神経質にならなくてもよいと思うのだが、親会社が純粋持株会社だったりすると、頭が痛いのだった。